頭文字D THE MOVIEは、2005年に公開された香港製作のカーアクション映画。
原作は、言わずと知れたヤングマガジン誌に連載されていたしげの秀一氏の漫画。1995年より連載が開始され2013年に全48巻をもって完結した。アニメーションが地上波で2作、CS放送で2作、劇場版1作、OVA5作と、今もって根強い人気を誇る作品。ゲーム化もアーケード、コンシューマーを含め数多くなされている。この原作は、香港、台湾を始めとするアジア圏でも広く人気を得ており、香港、台湾、日本人の若手俳優をそろえて香港映画で実写化された。
主演の藤原拓海役には、アジア圏で広い人気を誇る台湾人の歌手・周 杰倫(ジェイ・チョウ)。日本からは、茂木なつき役で鈴木杏が出演している。他の役者さんも、中華圏では有名な方が揃っているらしい。
左から高橋涼介、中里毅、須藤京一役の役者。香港、中国では記録的なヒットを飛ばし、香港と中国に加えマレーシアとシンガポールでも興行収入1位を記録した。原作国の日本での評価は、微妙な感じでアマゾンで★★★くらい、映画評サイトでも60点くらいの評価となっている。日本での評価が微妙なのは、映画のキャラや設定などが微妙に原作とずれている点。香港映画にありがちなコメディ要素も入っており、製作者側との文化の違いに違和感を感じるところだろう。
ただ設定だけ使って台湾辺りの若者の青春群像を描いたパチ映画などではなく、オール日本ロケで、CGは使わず日本の高橋レーシングの手により峠のシーンは作り上げられている。アジアの有名俳優を使い、制作費は1200万ドル(13億円)と立派な大作映画。中華圏全体が市場なので市場が広い事と、アクション映画では香港映画の方がやはり上。主演の周 杰倫(ジェイ・チョウ)は、プライベートではフェラーリに乗っているそうだが、映画で使った86が欲しかったが譲ってもらえず、オークションに参加して競り落としたそう。しかも競りの相手は父役の黄秋生(アンソニー・ウォン)で、価格は51万元(約700万円)だとか。原作に対するリスペクトはちゃんとなされている。
元の映画では、広東語が飛び交う様が更に違和感を深めていたらしいが、日本では主に吹き替えで公開された。
ジャケットの裏が86の運転席になっているという凝り様。
なんだか良くわからないが、下敷きみたいなものが付いてくる。マウスパッド?
原作ファンが受け入れられないのは、友人の武内樹役がかなり原作とはかけ離れていること。シルビアを駆る池谷が出ないので、樹と池谷を足して2で割ったようなキャラの設定で、しかも原作では2人がバイトするスタンドのドラ息子になっている。樹役の杜汶澤(チャップマン・トウ)は香港のコメディアンで、ジャッキー・チェンの映画に出てくるようなこてこての香港コメディ映画のノリ。日本人には絶対いないだろうというキャラ。また黄秋生(アンソニー・ウォン)が演じた父親の文太も原作とはキャラが変わっており、ここいらが受け入れがたい点のよう。高橋兄弟も兄の高橋涼介しか出てこない。ただし、CGを使わず実写で再現された峠でのバトルシーンは見事な出来で、原作の溝落としやガードレールぎりぎりを避けて通るドリフトなどが再現されている。また原作前半の山場であるレース用エンジンへの積み替えもちゃんと入っている。
原作の初期のエピソードを映像化しているが、膨大なエピソードや登場人物を1時間40分に収めるためには設定の変更や省略化も止む得ないし、脚本としても丁重に原作のエピソードを拾っていきながら、かなりよくまとまっている(そもそも日本人が実写化したものでさえ、原作を改変したものは多い)。アンソニー・ウォンの文太キャラも外見的には似ていて、映画のアクセントにはなっていた。以前紹介した、ハリウッド製のワイルドスピード3よりは、全然違和感ない日本が再現されています。
映画を見て思うのは、この95年頃から2000年代初めに掛けては、スポーツカーも人気があったし、MT車も選べるほどあった。安い中古車も豊富だったので、若者がここに登場する車に乗って峠を走る設定にも無理が無かった。原作やアニメ作品、ゲームなどは依然人気があるけど、現実はエコカーとワゴン車ばかりになって、スポーツカーはあっても高価、MT車はもう事実上選択が不可能なほど限られてしまっているなど、随分と活気がなくなりました。
ブックオフにて250円で入手したので(アマゾンだと70円から出てる)レビューする気になりましたが、期待してなくて(台湾あたりのパチもの映画だと思ってた)敷居が低かった分、かなり良い作品でした。星★★★★で、お勧め。
参考:Wiki 頭文字D、頭文字Dの登場人物、周 杰倫(ジェイ・チョウ)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、杜汶澤(チャップマン・トウ)の項、Blog版香港中国熱烈歓迎唯我独尊