ザ・ファイアクリスタル The Fire Crystalは、1984年にBPSより発表されたRPG。日本最初のコンピュータRPGと言われるザ・ブラックオニキス The Black Onyxの続編です。
ということで、前作のザ・ブラックオニキス The Black Onyx(1984)は、日本製RPGの古典にして金字塔とでも言うべき作品。前作では、容量の問題から戦士のみのパーティでオニキスを目指して冒険をしましたが、第2弾となる今作では、魔法と魔法使いにスポットを当てたものとなっています(第3弾のムーンストーンでは、僧侶にスポットを当てたものになる予定だったそう)。ウィザードリィに倣って追加シナリオという形をとっており、ブラックオニキスがないと遊べない仕様になっていました。
このパッケージは、馴染みのない方が多いと思われますがMSX版。他機種版は、BPSよりブラックオニキスと同じ年(84年)に発売されていますが、MSX版のみ、ずいぶん遅れて86年にBPS開発のアスキー販売という形で発売されています。タイトルもThe Black Onyx II〜Search for the Fire Crystal(ブラックオニキス?〜ファイアクリスタルを求めて)と変更になっています。またMSX版では、ファイアクリスタルのみでも遊べるようになっていました。
変更になった理由は不明ですが、本作はブラックオニキスに比べて難易度が非常に上がってしまった事と、そのためかブラックオニキスに比べていまひとつメジャーになりきれなかった事も原因かと思われます。また元々MSX版のブラックオニキスは85年末発売と他機種より遅かった事もあり、本作も86年と2年近く遅れてしまった事もあって、改良を施されたという事かもしれません。どちらにせよブラックオニキスのタイトルを使った方が良いと判断されたのでしょう。
物語は、ブラックオニキスを手にした勇者たちがウツロの町へと戻ると、閉ざされていたTemple(寺院)の扉が音もなく開いた。そこには、古い伝説の力を秘めた宝石〜Fire Crystalが隠されているらしい。すると一人の年老いた老人が話しかけてきた。“Templeは、お前さんを呼んでいるよ。そこであんたは古い伝説の力を秘めた炎の宝石(Fire Crystal)を見つけるだろう。”語り終えると、老人の姿は変化を始めて大きな石像となり、静かに闇の中に消えていった・・・。
MSX版の取り説とROMカセット。
他機種版ではフロッピーかカセットでしたので、これも馴染みのない人の方が多いかも。他機種版が発売されてから2年後と旬を逃した感じでの発売でしたので、個人的にもほとんど記憶にありません。評価の高かったブラックオニキスの名を前面に押し出したかったのか、ファイアクリスタルは副題になっています。MSX版のみキャラメイクが追加され、本作のみでも遊べる仕様になっていることから、追加シナリオではなく一本の独立した続編という扱いになるのかも知れません。
こちらは、MSX版ブラックオニキス。黒基調で地味。よく言えばブラックオニキスの持つ神秘性をよく表現している。
MSX版とPC-60版。この2作パッケージが共通だったのでしょうか。ブラックオニキスがP-88を初めとしてPC-8801mkIISR専用、PC-98、PC-60、FM-7、X1、MZ-2500、MSX、Apple II、SC-3000/SG-1000、ゲームボーイカラーと当時の機種をほぼ網羅していたのに対し、ファイクリはP-88、FM-7、X1、MSXと主要機種のみ。MSXで発売してくれただけでも有難かったのかも。
88年に発売されたFC版スーパー・ブラック・オニキス Super Black Onyxと、2001年にタイトーより発売されたGBC版ザ・ブラックオニキス The Black Onyx。どちらも開発はBPS製。
こちらは、87年に東京創元社より出版されたゲームブック版スーパー・ブラック・オニキス Super Black Onyx。FC版ではなく、PC版を基にしています。ゲームブックとしては、行き着くところまで行き着いたかと思われるほど凝った作品。
FC版は、戦士だけではな魔法使い、僧侶とも入った別もの。マップの構造も全く異なります。キャラが瞬きしたり、左右を向いたりとアニメ処理もされてます。BPSらしくFCなのに表示、操作系ともすべてが英語表記。渋いといえば渋いのですが、メインのマーケットである筈の子供は置き去りにしています。当時、攻略本付きで遊んだのですが、オリジナルとのあまりの違いに早々に断念してしまいました。
GBC版は、オリジナルの完全復刻のレガシーと、完全リニューアルされたレジェンドの2つのモード入り。レジェンドモードは、(この当時の)今風で完全に蛇足。シナリオを強化したり、イベントを追加する形をとってくれれば良かったかも。これ以外にも、同時期にプレイステーション版が開発中との話もありました。アイレムよりアーケード版(ブラック・オニキス・アーケード Black Onyx Arcade)が出る予定もあったそうです。出ない出ないと言われ続けたムーンストーンをよそに、ブラックオニキスのみはリメイクをされたり、派生作品が出たりと展開を続けていました。
ということで、長くなりましたので後編に続きます。