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サマータイムマシンブルース・ポニーキャニオン/東芝エンタテインメント

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 サマータイムマシンブルースは、2005年9月3日に公開された日本のどたばたSFコメディー映画。


 もともとは、2001年の劇団ヨーロッパの舞台が原作。この舞台にほれ込んだ、踊る大捜査線の本広克行監督により映画化され、脚本も劇団ヨーロッパの上田誠氏の手によるもの。主演は、アヒルと鴨のコインロッカーの瑛太さん、のだめカンタービレの上野樹里さん。劇団ヨーロッパ所属の俳優も多数出演している。アマゾンや映画サイトの評価では、星★★★★~程度と高い評価を得ている。また、舞台版もDVD化されて人気を博している。


 物語は、とある地方都市の大学のSF研が舞台。SF研とはいっても名ばかりで、SFの意味さえしらない部員たちが夏休みに野球に興じている。夏の部室でぐだぐだ過ごしていたところ、部員同士の悪ふざけによりコーラーをこぼしてしまい、部室備え付けのクーラーのリモコンが壊れてしまう。次の日、そんな彼らの元に突然タイムマシンが現れる。その際の彼らの思いつきとは、昨日に戻って壊れる前のクーラーのリモコンを取って来ること。昨日と今日というスケールの小さいタイムトラベルにより、世界の消滅の危機が訪れるという可能性がでてくることになる…。


 ということで、真夏の大学の部室というむさくるしい空間と、そこにたむろするリア充とはとても言えない、むさくるしい学生たちの巻き起こす、タイムパラドックスをめぐるどたばたをコメディータッチで描いている。時間の移動は、2005年の8月19日と20日の2日間。登場する人物も、SF研に所属する学生5人とそのまわりの数人のみと、原作が舞台劇ということもあって、こじんまりとした一種の密室劇になっている。8月19日の野球のシーンより物語が始まり、その同じ日にクーラーのリモコンが壊れる→次の日20日になぜかタイムマシンが突然現れる→19日に戻って壊れる前のリモコンを取りに行くという流れになっている。タイムマシンがなぜ存在するのか等の説明は無い。リモコンが壊れる前の日に行ってリモコンを取ってきてしまうと、取りに行くはずのリモコン自体がなくなり、壊れることもなくなってしまうため、矛盾が発生してタイムパラドックスが生じてしまうことに気付く。タイムパラドックスによる世界の消滅を阻止するために、19日と20日を何度も往復するという展開になる。


 タイムトラベルやタイムパラドクスをテーマとした作品は多いですが、その代表と言えるのが80年代のバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ。この作品でも、バック・トゥ・ザ・フューチャーの時計台風の建物が登場したり、色々なオマージュが散りばめられている。海外ものだと、わりとダイナミックに歴史が変わったりして、タイムパラドックスに対しての考え方もわりとおおらか。


 日本でタイムトラベルというと、やはりドラえもん。映画内には、それらしいネタは登場しませんが、のび太君の宿題を終わらせるために、現在のドラえもんが4時間後、6時間後、8時間後のドラえもんを連れてくるという、ドラえもんだらけというエピソードをほうふつとさせるような展開になる。戦国自衛隊とかスケールの大きなタイムトラベルものもありますが、日常のごくミニマムな4畳半のタイムトラベルといったところ。日本のタイムトラベルものだと、歴史を変えてはならないといった感じの、繊細なタイムパラドックス感が多いような気がする。筒井康隆氏や星新一氏のショート、ショートにも似たような展開があったように思います。

 この映画、SF研ということもあるのだろうけど、マニアな小物やオマージュがかなり多い。部室に東宝の特撮映画マタンゴのポスターが貼ってあったり、ガンダムのポスターが貼ってあったり、ガンダムの劇中曲が使われていたりする。タイトーのハリキリスタジアムやヴィダルサスーンという商品名も、印象的なキーアイテムとして使用されている。2005年の学生は、部室でファミコン版のハリキリスタジアムをやったりはしないと思いますが、懐かしい小物が散りばめられている。また、ロケ地が本広監督の出身地である香川県の善通寺市で行われており、四国学院大学という地元の小さな大学を舞台としている。この町が五重塔があったり、いい具合に寂れていたりと、すごく懐かしい独特の感じをこの映画にもたらしている。大学のキャンパスも都会のマンモス大とは異なり、漫画に出てくるギムナジウムのような独特な風景をかもし出している。


 大学が舞台ということで横道世之介のような青春ものを期待してみたが、物語はタイムパラドクスをめぐるどたばたを中心に構成されているため、青春ものという場面はあまりない。最初は、躍動感のない野球のシーンやむさい男たちが戯れあっているのを、わりとたいくつな感じで流してみてしまうのだが、もう一度見直すと最初の19日の時点でいろいろな伏線が張られていたことに気付くという作りになっている。とにかく、脚本が見事な映画、何度か見直して構成を楽しむといった作品になっている。青春映画としてみた場合だと、夏の暑苦しい部室、蝉の声、むさくるしい男友達ということで、話は荒唐無稽なのだが、妙なリアリティを持っている。そのようなむさ苦しい青春に心当たりのあるものにとっては、この映画自体がタイムスリップをさせてくれるタイムマシンということになるのでしょう。


 そういえば、80年代に夏のタイムマシーンという歌がありましたね。ということで、個人的評価は星★★★☆~★★★★。筒井康隆氏や星新一氏のショート、ショートが好きな方、あるいは夏の暑苦しい部室に心当たりのある方にお勧め。

参考:Wiki サマータイムマシーンブルース、本広克行監督、上田誠さんの項

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