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ラビリンス 魔王の迷宮 Labyrinth・ソニーピクチャーズエンターテイメント

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 ラビリンス 魔王の迷宮 Labyrinthは、1986年に製作されたファンタジー映画。1982年に公開されたダーククリスタル The Dark Crystalに続いて製作され、主人公、魔王以外のキャラクターがほとんどマペットにより演じられている。


 この当時、すでにカリスマ的な人気を誇っていたデビット・ボウイが、主演、楽曲の提供をしたことで話題となった作品。主人公のサラ役には、当時まだ15歳で売り出し中の新進女優だったジェニファー・コネリーが抜擢されている。製作は、ジョージ・ルーカスで製作会社はルーカスフィルム 、監督はモペット操者の第一人者だったジム・ヘンソン。2016年1月にデビッド・ボウイが亡くなった事を受けて、最近になってリメイクの噂が出るなどもあったようです。


 制作費は2500万ドルに対して、興行収入は1300万ドルほどと、当時としてはそれほどヒットしなかった。ただ、その後ビデオ化やDVD化などを経てカルトな人気を獲得しており、今日では再評価もされているのだそう。前述のリメイクの話もそうですが、こんなものも発売されるみたいで、ずいぶん昔の過去の作品だと思っていたらそうでもなかった。ちなみに、日本では当時RPGやファンタジーがブームだったため、ファミコンやMSX2でゲーム化されており、映画もそこそこの人気を得ていた。


 物語は、15歳の少女サラが継母より腹違いの弟(赤ちゃん)の子守を任されたことより始まる。泣き止まない赤ん坊に業を煮やしたサラは、赤ん坊をどこかに連れ去ってもらおうと愛読書に書かれていたゴブリンの王を呼び出す呪文を唱えてしまう。呪文により呼び出されたゴブリンの王ジャレスは、サラの希望通りに赤ん坊を自分の支配するゴブリンシティの城へと連れ去ってしまう。サラが弟を連れ戻すためには、13時間以内にラビリンスを抜けて、魔王の城まで到達しなければならない・・・。


 DVDのコレクターズエディションには、当時のメイキングやイメージスケッチ、ストーリーボードなど製作過程について記された、色々な特典が付いている。CGは主にオープニングの梟にのみ使われ、そのほとんどは、マペットや巨大なセット、マットペイントなど当時のSFXを駆使して作られている。


 劇中に登場するゴブリンのデザインは、ファンタジーのイラストを得意とするイラストレーターのブライアン・フロウドの手によるもの。ちなみにサラの弟トビーを演じたトビー・フロウドは、ブライアンの息子。


 ラビリンスというタイトル通り、迷宮探索を主なテーマのひとつにしており、天井の無いオープンフィールドの迷路から、ひたすら直線が続く悪夢のような迷路、植木を刈り込んだ庭園型の迷路、下水道風の地下通路、壁が警告してくる地下のダンジョンまで、様々なタイプの迷路が登場する。それだけではなく1人はいつも正直で、もう1人はウソしか言わない扉や、マウリッツ・エッシャーの相対性(騙し絵)、ルネ・マグリットのトロンプルイユ(錯視)など、精神を惑わせるあらゆる意味での迷路が登場してきます。


 イメージスケッチが作られ、それにあわせてセットが作られる。CGが本格的に使われる前の時代なので、模型やミニチュアを含めて全てが本当に実際に作られている。メイキングを見ると、とんでもない手間や人手、時間をかけて作られているということがわかる。


 74年のダンジョン&ドラゴンズから、80年代初頭のウルティマ、ウィザードリィを経て世界的にファンタジー世界や地下迷宮(ダンジョン)が、注目を集めていた頃でしたから、それらのファンタジー世界の実写化という意味もあったと思います。


 魔王に毒入りの林檎を食べさせられた事による幻覚により、泡の中の世界でのダンスパーティに参加することになるシーン。こちらも、子供から大人になる前に大人の世界を垣間見るという意味合いで、思春期の精神世界という迷宮を表現していると思う。主要なシーンではデビッドボウイの楽曲がかかり、ミュージカル仕立てとなる。


 こちらは、当時もののVHS。ポスターやサントラなんかも、こちらのイラストを使用していた。


 当時は、この頃ルーカスがよく作っていた子供向けの金のかかったB級映画という印象でした。なぜかルーカスは、ハワード・ザ・ダックとかイウォーク・アドベンチャーとか、Willowだとか、あまり評価されない特撮映画をたくさん作っていた。アクションや剣劇があるわけでなし、迷宮や特撮は良いけれどストーリーは子供向けで退屈な映画といった印象だった。※ここから先は、ネタばれしてます。


 今見ると、不思議の国のアリスやオズの魔法使いといった、異世界を通り抜けることで大人になる少女の通過儀礼を描いた映画だということがわかります。オープニングに出てくるサラの部屋には、オズの魔法使いやこの映画の元ネタである“まどのそとのそのまたむこう”の本が置いてある。マウリッツ・エッシャーの騙し絵が壁にかかっており、劇中に登場するゴブリンたちのぬいぐるみ、それだけでなく魔王らしきフィギュアまで置いてある。つまり、このラビリンス、迷宮とはサラの精神世界を暗喩したものだということがわかる。デビッド・ボウイ扮する魔王は、劇中あれこれと様々な手段でサラを幻惑しますが、最後には、おまえが望むことはすべてしてやった。私を崇拝し、愛してほしい。そうすれば、私は喜んでおまえの僕(しもべ)になろう・・・などと言い出します。あげくにサラにYou have no power over me(あなたは、私に対して何の力もありません)と言われて、梟になってピューっと飛んで逃げて行ってしまいます。 これは、同時に美少女を前にした中年のおじさんの悲哀も描いているんですね。


 デビッド・ボウイは、白のタイツを履いてこの哀愁ある魔王役をノリノリで楽しそうに演じていますから、実にふところが深い。まあ実際には、ジェニファー・コネリーはデビット・ボウイと共演したことから高校では、嫉妬によるいじめにあったそうです。結局、大人の世界を垣間見せてくれる誘惑者への憧れや好奇心と、子供のままファンタジーの世界にいたいサラの葛藤の夢世界ということで、非常にロマンチックな話なんですね。この作品のもうひとつの売りであるゴブリンのデザインや世界観は、イラストレーターのブライアン・フロウによるところが大きい。この方、有名なようでアマゾンでも画集が売っている。


 このブライアン・フロウはイギリスの人なので、そのまんまイギリス製のゲームブック、ファイティングファンタジーの世界観に通じるところもある。日本製のゲームにありがちなアニメ絵ではなく、このような濃いファンタジーの世界の実写化としても楽しめます。日本のような甘いファンタジーではなく、油断するとバクっと喰われそうな、ダーティな闇や暗がりの怖さをも含めたファンタジーの世界。


 ということで、あらためて見直してみると、とても良く出来た作品であるということが理解できる。個人的評価は、星★★★★☆(90点)。ファミコン好きやRPG好き、ウィザードリィ好き、ダンジョン好き、ゲームブック好き、ファンタジーな気持ちを忘れないすべての人にお勧め。

参考:Wiki ラビリンス/魔王の迷宮、デビッド・ボウイ、ジェニファー・コネリー、ジム・ヘンソン、マウリッツ・エッシャー、ルネ・マグリットの項、amass.jp、ミドルエッジ【美少女出身】ジェニファー・コネリー☆ワンス・アポン・ア・タイム~子役出身

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