アーケードゲーマー ふぶきは、ケロロ軍曹の吉崎観音氏が1998年~1999年頃に月刊ファミ通Wave、ファミ通ブロス誌上で連載していた漫画。
物語は、普通の中学生だった桜ヶ咲ふぶきが、ある時に謎の人からパッション・パンティをもらう。このパンティは、その力を発動するとゲーム魂が宿り、ゲームをする際に必殺技が使えるようになるというものだった・・・。漫画の好評を受けて、2002年から2003年にかけてアーケードゲーマー ふぶき①~④巻としてOVA化された。2006年に発売されたアーケードゲーマー ふぶき COLLECTIONは、それまでの①~④巻までの作品を一本にまとめて収録したコレクション版。これ以外にも、バラで発売された①~④巻までをまとめて収納できるBOXと特典DVD1枚をセットにしたアーケードゲーマーふぶき 一撃でクリアー BOXというのが発売されている。
OVA版では、原作では全18話の話を4巻にまとめてあるわけですから、細部が色々と異なっています。原作では、ふぶきと友人の国分寺花子の学校とゲーセンでの日常的な生活を描いた話がメインで、最終話付近で世界ゲーム大会が開かれるという展開になっています。OVA版ではゲーム大会の日本予選にふぶきが参加し、そこから勝ち進んでいく中で原作にも登場したライバルキャラが絡んでいくというようになっています。
OVA版について特筆すべきは、セガと日本物産、すがやみつる氏協力の元、実在のゲームがOVA内に登場しているというところ。ベスト・オブ・アーケードゲーマ(世界ゲーム大会)の予選が日本で行われ、最初のバトルは中野サンプラザの壁を使用した特設ステージに日本物産の1980年のアーケードゲーム・クレージークライマーで勝負をするという展開。しかもその筐体はバンダイのLSIゲーム・クレージークライミングを模したものという、どんだけマニアックなんだよという設定になっています。この後も、ファンタジーゾーン(86)、ムーンクレスタ(80)、トランキライザーガン(80)、バーチャファイター(93)など、実在のゲームを使ってのゲームバトルが繰り広げられます。声の出演にも、キーとなる人物に古谷徹氏、藤岡弘、氏などの豪華なキャストがあてられている。アーケードゲーマーふぶきは、ゲームセンターあらしのオマージュ漫画として有名ですが、OVA版では原作に登場したキャラやエピソードなどを上手くストーリの中に盛り込みながら、ラストの方ではオリジナルの展開に変更されている。藤岡弘、氏を起用している点、漫画の連載時期が1998年~1999年だったこと、セガが協力していることなどから、これも当時を知る者にとっては、感涙ものの一種のパロデイ的な展開になっている。
こちらは、ユージン版の桜ヶ咲ふぶき。ふぶきの必殺技一撃でクリアを再現。ちなみにこの筐体は、クレージークライマーのものでOVA一巻に登場する中野サンプラザでのクレージークライマー勝負の時のものを再現している。前述のように、この筐体の元ネタはバンダイの電子ゲームであるFLクレイジークライミング。
すがやみつる先生協力の元、ゲームセンターあらしオマージュ漫画ということであらしも謎の人さんとして登場。原作では、クライマックスのラストシーンでゲームに対する万感の思いのこもった一撃を披露したが、OVA版では最初から登場している。少年時代のあらしと、現代の謎の人さんとして、全編に渡って活躍を見せる。
ふぶきのライバルである十文字ちづる。ギュラシック四天王の1人で、人呼んでシューターちづる。ディグダグのプーカを模したゴーグルがお洒落。
金髪アメリカ女性のゲーマーメロディー・ハニー。同じ吉崎観音作品のケロロ軍曹にも登場している。お笑い好きで、ライバルとして登場しつつも、わりと中立的なキャラとなっている。作品内では、明るい天然なキャラだった。もちろんOVA版にも登場している。ノーブラボイン撃ちとかやれそう。
こちらは、ふぶきと親友の国分寺花子のコンビ。この2人設定としては、女子中学生。ルーズソックスが流行っていた90年代末頃の話なので、今だと30歳過ぎか。時が過ぎるのは、早いですね。
あらしとふぶきの直接対決。ちなみに何故、筐体の上に倒立しているかというと、あらしのエピソード内で飛行船の中での勝負があり、揺れる不安定な中、筐体と一体化することでそれを克服したという話があるから。ここから、ムーンサルトに発展した。CGを使って数々の必殺技を再現した実写版あらしとかあれば楽しそう。ピクセルのような企画を日本でやる場合、あらしかふぶきの実写版をやって欲しい。
漫画版は、ケロロの吉崎氏の作品ということで有名ですが、OVA版も出色の出来。作られたのが、もうちょっと後だったら発売元のバンダイとナムコが一緒になっていますので、パックマンやラリーXなどのナムコゲームも登場してきたのかなと思うと、そこだけが惜しい点。今からだと、4巻まとめたアーケードゲーマー ふぶき COLLECTIONが出ていますので、こちらの方が入手しやすい。
個人的には、連載当時アーケードゲーマー ふぶきは知らなかった。この1998~1999年頃には、ファミ通とかゲーム雑誌はもう買っていなかったので。OVA版に関してもネット上でタイトルだけ知っていて、テレビ放映されたものかなと思っていた。90年代末に約15年ぶりくらいに、一種のオマージュとしてあらしが復活したことになる。この作品には大人になったあらしが出ているなど、オリジナルのあらし世界とはパラレルワールドのような関係になっている。この90年代末の頃でも、懐かしいレトロゲームを扱った漫画として当時を知るファン向けに作られ受けたものだと思いますが、そこから更に15年近くが経過してしまっています。今となっては、昭和だったあらしの世界も懐かしいし、ルーズソックスのふぶきの時代も懐かしいという、2重の入れ子構造のような関係になっているのかなと思います。
参考:アーケードゲーマーふぶき/吉崎観音・エンターブレイン、ゲームセンターあらし/すがやみつる、Wiki アーケードゲーマーふぶきの項