こちらは、2014年にオークラ出版より発売された家庭用ゲーム機興亡史 ゲーム機シェア争奪30年の歴史と、同じ筆者によるホビーパソコン興亡史 国産パソコンシェア争奪30年の歴史。
家庭用テレビゲームの歴史、発展史をまとめた家庭用ゲーム機興亡史。著者は、近年レトロゲーム関連の本を出しまくっているコナミ出身の前田尋之氏。ソフトカバーのコンパクトな書籍。
日本でのゲーム機の発展史を第1章から8章までに分けて解説している。このような書籍としては、アーケードゲームを含めた総合的なゲーム史を扱った、それは「ポン」から始まった-アーケードTVゲームの成り立ちが有名だが、こちらは家庭用のゲーム史のみに特化して簡潔にまとめてある。アマゾンの評価を見ても分かるように、平坦な記述で書かれており、それほど資料として詳しい本ではない。ゲーム史の記録とかそのような大げさなものではなく、どちらかというと軽く読んで楽しむための本といえるでしょう。
モノクロで文章メインの本ですが、ところどころに該当する機種の写真が入れてあるため、視覚的にも分かり易い。ファミコンのブームを起点として、ファミコン前史、ポストファミコンの時代、CD-ROMとポリゴンの時代、セガのゲームハードからの撤退、プレイステーション2とソニーの覇権、Wii、NDSによる任天堂の復権、現行機、スマートフォンの時代…というように駆け足でゲーム史の流れを俯瞰することが出来る。
この家庭用ゲーム機興亡史は、ライトな作りで電車の中などでも気軽にゲーム史を俯瞰することができるように書かれている。参考文献がネットの任天堂サイトやコタクジャパンとかなっていますので、ネットで調べればわかる情報ではあるのですが、平坦な記述で簡潔にまとめてくれている点において十分にこの本の価値はあると思います。
こちらは、2014年にオークラ出版から発売された、ホビーパソコン興亡史 国産パソコンシェア争奪30年の歴史。80年代に家庭に入ってきた当時の国産のPCの盛り上がりと衰退をテーマにした書籍。これまで、この手の昔のパソコン本は少なくて、当時ものの技術書寄りのものとか、ビジネス書寄りのものくらいしかなかったのですが、ここのところ立て続けに出版されている。ファミコンなどの家庭用ゲーム機の栄枯衰退をテーマにした家庭用ゲーム機興亡史に続いての第二弾。
当時御三家と言われたPC-8801、X1、FM-7を中心に、TK-80などのワンボードマイコン、PC-8001、PC-6001から家電各社のオリジナルパソコン、ぴゅう太、M5、SC-3000、ファミリーベーシックなどのホビーパソコン、第一次PC戦争で御三家に敗退した家電メーカー14社連合が終結したMSXとMSX2、PC-9801を筆頭に、X6800、FM TOWNSなどの16ビット、32ビット機などまで、ウィンドウズが入ってくる前の国産の家庭用のPC歴史が書かれています。
ホビーパソコン興亡史の方は、文章主体で写真もモノクロと物足りない部分もあるのですが、それを補う資料編みたいな位置付けで発売されたのが、同じ前田尋之氏の手によるホビーパソコンガイドブック。こちらは、全編カラーでハードの写真や当時の広告など、見て楽しむものになっています。ホビーパソコンガイドブックだけだと歴史の中でハードの位置付けや繋がりがわかりにくいため、この2冊は相互に補完するかのような関係になっている。
憧れの機種だったシャープのパソコンテレビX1。シャープのテレビ事業部が製造しており、同じシャープのパソコン事業部のMZとも競っていた。この頃は、機種が違ってしまえば同じメーカーのPCといえども互換性がなかった。
NECの安価なホビーPC、PC-6001/6601シリーズ。音声合成が可能で、しかも音階が付けられて歌を歌わせることができた。今考えると、ボーカロイドなど時代を先取りしている。
80年代8ビットPCの主流となった王者NECのPC-8801SR。FM音源を積んでおり、それまでの味気ないBeep音から流麗な音楽を奏でることができた。スプライトを持たないため、重ね合わせてスクロールさせるアクションゲームは苦手だった。
近年発売されたもので路線が近いものといえば、当時のカタログ、雑誌の記事などから構成された永久保存版80年代マイコン大百科。当時の雑誌広告からの引用が主体の構成になっている。惜しいことに、こちらはオールモノクロ写真で構成されている。
10年ほど前に発売されたソフトバンクのBeep復刻版。当時は、LOGiNやマイコンBASICマガジン、テクノポリス、POPCOMなど、主にPCゲームに特化したホビーよりの雑誌が多数発行されていた。機種ごとの専門誌であるOh! PC、Oh! X1、Oh! MZや、技術やハード寄りのI/Oなど、住み分けができていた。このBeepを出版していた頃のソフトバンクといえば、まだPC関連の書籍を出していた、地味ないち出版社にすぎなかった。こちらは、当時の記事をそのままに1/4に縮小して掲載できるだけ掲載したという作り。
PC-8801のエミュレーターと当時のゲームを詰め込んだ、蘇るPC-8801伝説。この2002年頃に、このようなエミュレーター+当時のゲーム本がちょっと流行った。
1992年の休刊から、10年の歳月をかけて2002年に復刊されたMSXマガジン永久保存版。好評だったため第三弾まで発行された。
電波新聞社のマイコンBASICマガジンに連載されていた記事をまとめたチャレンジ!!パソコン AVG & RPG。80年代当時に出版されて、大変な人気を博してVまでシリーズが発売された。こちらも2003年に復刻されている。
ファミコン前夜とその社会現象に特化した書籍としては、ファミコンとその時代 テレビゲームの誕生がある。シャープ出身で任天堂開発者だった上村雅之氏の手によるもので、当事者本人が書かれたものとしてその資料的価値は一級品。その上村雅之氏は現在は立命館大学におられて、立命館大学ではゲームアーカイブプロジェクトというゲーム史を学術的に扱うプロジェクトを行っており、その一環として書かれたもの。
写真は、巻頭に少しとモノクロの小さなものがあるだけで、ほとんど文字だけで構成されているお堅い本。このようなゲーム史を扱った書籍としては、2005年に発売された“それは「ポン」から始まった-アーケードTVゲームの成り立ち”が有名。この本は長らくプレミア価格で売られていたのだけれど、2015年に再販されたようで、現在では普通に定価で買うことが出来る。もっと古い本としては、1988年のテレビゲーム―電視遊戯大全が有名。こちらは、再販される見込みが薄いため、とんでもないプレミア価格が付いている。1994年には電視遊戯時代―テレビゲームの現在として、続編も書かれている。
ゲーム史に関する本は数多く書かれていますが、ゲーム機の歴史をこれだけ簡単にまとめたものは少ない。同時に80年代当時のパソコン文化に関しても、今となっては書かれることはほとんどありません。そういった意味では、電車の中でも読むことが出来るような平易な文章で簡潔にまとめられたこれらの3冊の持つ意味は大きい。値段も安めだし、当時のゲーム文化に思い入れのある人には、気軽に手にとって読んで欲しいシリーズだと思います。
参考:家庭用ゲーム機興亡史 ゲーム機シェア争奪30年の歴史、ホビーパソコン興亡史 国産パソコンシェア争奪30年の歴史、懐かしのホビーパソコン ガイドブック/前田尋之監修・オークラ出版、MSXマガジン永久保存版/アスキー、Beep復刻版/ソフトバンク、チャレンジ!!パソコン AVG & RPG/山下章・電波新聞社