ファミコン通信(エンターブレインムック)は、2016年に発売されたムック本。ファミコン通信は、現在でもファミ通として発売されているゲーム誌ですが、ファミコンミニにあわせてファミコン通信の名が復活した。
裏面は同じく復活したゼルダの伝説の広告入り。このイラストが使われるのは何年振りなんでしょうか、これも雰囲気作りに一役買ってますね。
内容としては、最新のニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータを扱っているのだけれど、出来るだけ当時の紙面を復活させたような作り。クロスレビュー風の収録ソフトの紹介。これを見ていると、なんだか本当にこれらのソフトが新作として発売されたような錯覚に陥る。
ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータのハード紹介も抜かりはない。
高橋名人や毛利名人の対談、カラーコピーにとって切り取って組み立てるファミコンのペーパークラフト、ファミコンソフトのシールと楽しませようという仕掛けはこれでもかと入っている。ファミコン通信独特のノリがあった読者の投稿ページや桜玉吉氏の漫画など、アスキー系の雑誌で見られた独特の空気感も再現している。元々、ファミコン通信はログイン誌で連載されていたファミコン通信、MSX通信というコーナーが独立して出来た雑誌。そのため、ログイン誌の真面目なんだがふざけているのだかわからないノリもそのまま移植されていた。
ということで、なかなか頑張っている紙面づくりなのですが、Amazonでの評価は星三つ半と微妙な感じ。その理由は、肝心の個々のソフト紹介が、ひとつのゲームに付き一ページしかない上に、文字も大きく文字と文字の間も離れていて、えらくあっさりしたものになっているという点。攻略記事などではなく、簡単に紹介しているといった感じ。
後半には、当時の紙面も収録されているのだが、マップが掲載されて細かな解説が入るなど熱量が全く異なっている。これならば攻略や紹介は、いっそのこと当時の記事を再録すればよかったのにと思ってしまいます。ファミコンミニを買った何人の人が、収録ソフトを攻略するかといえば、雰囲気だけ楽しむという人が多いはず。なので紹介は簡単なものでもかまわないと思いますが、当時の熱気が再現されていない。そこが惜しむべき点かなという気はします。
そうは言っても、価格も1,000円ほどだし、再びこの紙面を復活してくれただけでも買いというのは確か。ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータとあわせて買えば、より当時の空気を再現してくれます。出してくれたことに価値がある企画と言えるでしょう。願わくば、クロスレビューなど当時の記者にやって欲しかったかな。
ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータMagazineは、ファミコン通信と同じくファミコンミニの発売にあわせて、徳間書店のファミリーコンピュータMagazineが復活したもの。表紙には、実に222ヶ月(約18年)ぶりの大復活と書かれています。ファミコン通信を発売していたアスキーはもう元の形としては存在しませんが、スタジオジブリや大映、徳間ジャパンコミュニケーションズなど数々の関連会社を抱えていた徳間書店も、従来の会社は解散するなどかなり会社の形が変わってしまっています。あれから、随分と月日がたったことを感じさせます。
裏表紙はファミコン通信と同じくゼルダの広告。この初期ゼルダのイラスト、どこかスタジオジブリっぽい。
紙面は、出来るだけ当時の雑誌の雰囲気を再現しているかのような作り。こちらもファミコンミニ収録のソフトが、昨日発売されたかのような錯覚をもたらす。
ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ本体の解説も詳しく載っている。
ファミマガの売りであった超ウル技のコーナーも再現、当時っぽい漫画なども収録されている。
1,980円とファミコン通信の倍という価格なのですが、こちらのAmazonでの評価は星★★★★☆となかなかの高評価。その理由が当時のファミマガの記事をスキャニングしたデータが、PDF形式でまとめて1000ページ超えほど収録されたDVDが付録についているという点。おまけでスーパーマリオブラザーズ完全攻略本まで入っているという熱の入れよう。当時の記事なので、当然ながら当時の熱気までDVD内に収められていることになります。
価格はちょっと張りますが、ファミコン通信とどちらか一冊をということならば、やはりこちら。ただし、2冊買っても3,000円くらいだし、このような復刻の機会はめったにないことだと思われますので、ここは2冊とも買っておくというのが正解でしょう。どちらも、価格のわりには出来が良いと思います。
超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集は、徳間書店より2011年に発売されたファミリーコンピュータマガジンの2代目編集長だった山本直人氏による回想録。この本の存在は以前より知っていたのですが、当時ファミコン通信は読んでいたのですがファミマガ読者ではなかったため、なかなか手が出せなかった。
ファミマガといえば、ファミコンミニに合わせて18年ぶりに復活した復刊号が、なかなかの好評ということは前述しました。こちらは、その熱い熱気を帯びたゲーム誌が、どのようにして作られていたのかという舞台裏を紹介している。
文字中心の白黒のエッセイ集だと思っていたら、いい意味で裏切られた。当時ファミマガで漫画を連載していた作家によるカラーのイラストが入っており、当時の紙面や攻略記事などもカラーで掲載されている。エッセイもかなり面白い。例をひとつ挙げると、当時ファミコンのギャラクシアンの裏技を掲載したところ、ナムコよりクレームが入った。デモ時にコマンドを入力すると、隠しで入れられたシバの女王や風の谷のナウシカの音楽が流れるというもの。人気作を多数抱えゲーム業界の大手だったナムコからのクレームに編集部は騒然となったが、ファミマガの出版元は徳間書店であり、当時はジブリの親会社でもあった。そのためクレームは無しとなってしまったそう。
それ以外にも、アスキーのドルアーガ本(初のゲーム攻略本)に倣って、スーパーマリオの攻略本を初めて出版したところ、重版がかかりにかってゲーム攻略本が2年連続で書籍の年間ベストセラーの1位に輝いた話や、編集部に電話をかけられるサービスを導入したところ、回線がパンクしてNTTが飛んできた話だとか、今の時代からは信じられない熱い時代の話が収められている。出せば売れた今からだと考えられないくらいに熱かった時代の話。
読んでいて、なぜこんなに面白いのだろうか、初々しく清々しいのだろうと考えてみたが、これはひとつの青春の物語だからと思い当たった。ファミマガの読者だった方には、子供として(読者として)接していた知られざる雑誌編集の裏側を、そうでないにも社会人に成り立ての頃を思い起こさせてくれる、優れた青春の書としてお勧め。