Dungeons & Dragons Basic Rules Set 1は、1985年に新和より発売された日本で最初のDungeons & Dragons。そのBOXの色から、通称赤箱と呼ばれています。
販売元はホビージャパンに変わっていますが、現在でもDungeons & Dragonsは販売されており、実は2010年頃にも赤箱は復活している。これは元の赤箱の復刻ではなく、その時点での最新のD&D第四版を赤箱として登場させたもの。それは通常のスターターセットにカラーマップ、厚紙トークン、パワー・カードもセットになった豪華なものだった。そのため、増版や再生産ができず、生産分のみという限定品だった。そのためあっという間に売り切れてしまったよう。こちらで紹介するのは、その復活版ではなく1985年発売のオリジナル版。
ボックスを開けたところ。衝緩材はオリジナルではなく、箱潰れ防止にショップが入れてくれてたもの。
これが、新和オリジナルDungeons & Dragons Basic Rules Setの中身。つい最近になって手に入れて、売られているものやオークションに出てくるものにはダイスが紛失というものが多いのだけれど、しっかり付いていた。
最初にこちらから読んでくださいという指示のあるプレイヤーズマニュアル。
こちらは、ダンジョンマスターズルールブック。どちらもペーパーバックとも言えないほどの薄い書籍。
それにダイスが6個。これだけで当時4,800円した。ボックスの中はすかすかで、TRPGというものを理解できない人が見たら、なんて高価なんだろうと感じるようなもの。ただし、これはTSRで発売された米国のオリジナル版に忠実に準拠しているらしい。コンピュータ誌やゲーム雑誌でRPGの元祖という時には、必ずといってよいほどこの赤箱が登場するが、1974年に発売されたOriginal Dungeons & Dragonsは、白い箱に入っていた。日本に初めて登場したのは1983年発売の第4板。つまりDungeons & Dragonsの元祖が赤箱のイメージなのは、日本だけということなんですね。
広告やアンケートなども入っていた。ある意味冊子よりこちらの方が貴重かもしれない。
富士見書房のファンタジー小説やゲームブックなど、Dungeons & Dragons関連商品のちらし。裏面は新和の広告。
こちらは、新和からの購入者へのアンケート。このボックスは高価ということもありますが、通常の玩具店や書店では扱っておらず、田舎の住人には入手しにくいものだった。プレイヤー諸君へ!!という呼びかけが、このボックスセットを手に入れたオーナーのわくわく感を表しているような気もします。
パソコン誌やゲーム雑誌の紹介では、必ずといってよいほどドラゴンクエストが参考にしたウィザードリィ、ウルティマはこのDungeons & Dragonsを基にして生まれたと、赤い箱とともに紹介されていたため、この赤箱を手に入れればDungeons & Dragonsが満喫できると考えてしまいがちですが、これはベーシックセットにすぎず1〜3レベルのキャラクターとダンジョンでの冒険でしか遊べないもの。この後もレベルに応じて「青箱」「縁箱」「黒箱」とそろえる必要があるという、非常にお金のかかる遊びでした。
こちらは、権利関係がWizards of the Coast社に移ってからの2000年に発売されたDungeons & Dragons第3版。新和版の冊子のぺらぺらさがよくわかると思います。Dungeons & Dragonsには、オリジナルとは別物の上級者向けAdvanced Dungeons & Dragonsという系統もあって、小説、ゲームブック、コンピュータゲームなどの多くは、このAD&Dを基にしており、あのウィザードリィもこのAD&Dを基にしている。日本では、新和から発売されたのだけれど売れなかったため、AD&Dの方は遊んだことのある人は少ないよう。ちなみに現在ホビージャパンより発売されていいる今のDungeons & Dragonsは、このAdvanced Dungeons & Dragonsからの流れを汲んでいる。
90年代に新和から製品が出なくなり、日本では3年ほど空白の期間が空いた。1994年からは発売元が新和からメディアワークスへと移り、第5版が翻訳された。この時の展開は、なんと文庫版。これは、この時期の日本製のTRPGのほとんどが文庫で展開しており、ルールブック、リプレイ、小説、アニメなどメディアミックスされていたことから、この形になったらしい。安く入手できるのは良いけれど、有難みが薄いような。
個人的な思い出というと、実物を見たり手に取ったのは今回が初めて。田舎の子供にはあまりに入手し難いものでした。自宅近くの市内で一番大きなホビーショップには、ホビージャパンのボードゲームなどが置いてあったので、ひょっとしたらそこなら手に入ったかも。90年代になって都市部のデパートのテナントにアナログゲームショップが入って、そこで初めてメタルフィギュアとかTRPGのセットを見ることができた程度でした。実際に当時遊んだ方の回想としては、落語家の三遊亭 楽天さんがブログで詳しく語られている。三遊亭 圓丈師匠のようにゲームを得意とする噺家さんが現れたか、という懐かしい驚きがあります。
今、ツイッター上では、日本のRPGの歴史の話で盛り上がっており、その話にも参加したかったのですが、ちょっと一度には無理。また次回以降に。ちなみに今現在は、Amazonでスターターセットが3,000円ほどで入手可能となっており、いい時代になったものです。
参考:Wiki ダンジョンズ&ドラゴンズの項、ホビージャパン公式サイト、三遊亭楽天のブログ、RPG Reference