こちらは、1980年に発売されたトミーのSLIMBOY・RACING5 スリムボーイ・レーシング5。
トミーのスリムボーイという液晶ゲームのシリーズの一つであり、5種類のゲームが楽しめます。スリムボーイは何種類かのゲームを内蔵しているのが売りであり、6種のシューティングゲームが楽しめるスリムボーイ・シューティング6と同時期に発売されました。その後、シリーズは続きスペースクオーツ、ベースボールクオーツ、ニューベースボールクォーツ、イデオン、ウォッチ&ボーリングとシリーズは続いていきます。またスリムボーイの名の通り本体が薄いこと、クオーツ(時計)が付いていることなども特徴でした。
1、2.サーキットレーシングA、B。タイトーのフィスコ400(77)やアタリのインディ4(76)、スーパースプリント(86)、バッドランドズ(89)など、スクロールしない1画面のコースを周回するタイプのレースゲーム。
3.デッドヒート。タイトーのスピードレースシリーズやセガのモナコGP(79)など、この頃定番であった縦スクロール型のレースゲーム。
4.カーチェイス。この時期のカーチェイスだとバンビーノのLSIゲーム RACE 'N' CHASE(80)や、時期は異なりますがタイトーのチェイスH.Q.(88)など。個人的には、この画面からは任天堂のレーシング112を思い出します。
5.ヘッドオン。これは、有名なセガのヘッドオンから。バンダイからも液晶ゲームに移植されていました。ちなみにオリジナルはドットイートの元祖ですが、これはドットイートしない。
本体。ゲーム&ウォッチなどと比べてもかなり薄い。前述のように、(脳内補填して)ゴージャスなゲームが詰め込まれていることから考えても、高級感を売りにしていました。本体デザインや箱絵にも、子供の玩具っぽさがあまりなく、大人向けの文具のよう。初期ゲーム&ウォッチでも、クオーツ時計付を売りにして大人をターゲットにしていましたので、同時期のこちらでもその路線だったのでしょう。
より大人っぽさや高級感を醸し出す、革っぽい合皮ケース付。ゲーム電卓などのこの当時の一般的な電卓よりも薄い。
この高級感を演出している理由のひとつが、その価格。ゲーム&ウォッチが6,000円ほど、バンダイのゲームデジタルが4,980円その後→3,980円といった時代に、なんと9,980円。高価だった蛍光表示管ゲームが7,000円〜9,000円ほどでしたから、それ以上。電子ゲーム界のフェラーリと呼ばれたバンビーノの初期FLゲームに匹敵します。
トミーの方のインタビューを読むと、大型の液晶を使っていたのが、高価になった理由のようです。この1〜2年後に発売されたスリムボーイ・スペースクオーツやイデオンでは、5,980円とかなり普通の値段に近づいています。
トミーは、腕時計型のウォッチマンシリーズや、ウォッチマンを通常の筐体に改めたウォッチマン・デジプロシリーズ、ゲームの設定を自分で出来るプログラミング・デジプロシリーズなど、色々な液晶ゲームのシリーズを発売していました。写真のものは、プログラミング・デジプロのパワーマン。よく言えばバラエティに飛んでいる、悪く言えばゲーム&ウォッチやゲームデジタルシリーズのように一貫性がないといったところでしょうか。このスリムボーイシリーズは、そこそこ有名でネット上にもちらほら情報があります。個人的にも、当時これをデパートかどこかで手にした記憶も残っています。しかし、この価格ではとうてい買ってもらえるような対象ではありませんでした。
ということで、今となっては一番の特徴はその価格だったという、トミーのSLIMBOY・RACING5 スリムボーイ・レーシング5でした。
参考:CVSオデッセイ、帰ってきた電子ゲーム、KLOV、Nostalgia スリムボーイの項、Wikiスピードレースシリーズ、モナコGP、フィスコ400、スーパースプリント、ヘッドオンの項、RATSCATS WEB PAGE カタログコレクション