サイクロンZ Dragons Forever 飛龍猛将は、1988年に公開された香港製のアクション映画。
83年のプロジェクトA、84年のスパルタンXに続く、ジャッキー、サモハン、ユン・ピョウの香港3大アクションスターが揃い踏みした作品。このためか、タイトルもカタカナ+英単語の日本独自の意味不明なもの(おそらく響きだけのもの)になっています。英題のDragons Foreverは、この競演作ということを表現していると思われます。
内容とタイトルが全く一致していないところが凄い。しかし、それでもジャッキーの映画っぽいと一発でわかる。ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!(原題:A Hard Day's Night)、愛と青春の旅立ち(原題:An Officer and a Gentleman)に匹敵する名邦題だと思います。
原題が飛龍猛将ですから、これではよくわからない。快餐車、Wheels on MealsをスパルタンXとしたことと同様、映画会社担当者のセンスが光ります。当時は、勝手にプロジェクトA三部作と思ってました。
そして、この映画もう一つの売りが、ジャッキーのベストバウトとも言われるスパルタンXの強敵、ベニー・ユキーデとの再戦。ベニー・ユキーデは、ベニー・ザ・ジェット・ユキーデとも呼ばれたアメリカンキックボクシング(マーシャルアーツ)のチャンピオン。
物語は、今回のジャッキーは弁護士。養魚場の水質汚染が問題となった訴訟で、相手側の工場の弁護を担当している。そこにブローカーのウォン(サモ・ハン)、探偵のトン(ユン・ピョウ)も絡んできて物語は展開してゆく。しかし、この工場には裏の顔ともいうべき秘密があった・・・。
3大スター揃い踏み、ベニーユキーデとの再戦にもかかわらず、あまり日本ではメジャーではなく、評価も高いとは言えない作品。ストーリーが、ラブストーリーの要素を含んでいたり、舞台が麻薬工場だったりと、いまひとつ地味に感じることからか。しかもユン・ピョウが精神科に通っていたりと、地上波では微妙な設定も。これはサモ・ハン監督作品ですが、同じく監督した大福星やスパルタンX、ファーストミッションでも似たような設定を入れていたりと、サモ・ハン監督はなぜかこのような設定が好きなよう。
日本だと全部ジャッキー映画、ジャッキーの新作といった感じで捉えてしまいますが、プロジェクトA(成龍監督)でヒットを飛ばした後、公開された一連の映画、五福星、七福星、大福星、スパルタンX、ファーストミッション、サイクロンZと、この辺はすべてサモ・ハン監督の映画。この当時は、ゲスト出演、カメオ出演しただけのものでも、全てジャッキー映画として公開されていました。
時期的に日本のバブル期にあたり、服装や小道具、登場するレストランなども含めてトレンディドラマのようなノリもあります。海洋汚染や麻薬工場など暗めのテーマと合わせると、なにか混ぜこぜな印象も。
ただしアクションシーンは豪華。3大スター同士の息のあった戦いや、ベニーユキーデ戦のみならず、ロイ・チャオ(インディジョーンズの中国ギャングのボス)、ビリー・チョウディック・ウェイ(プロジェクトAの海賊親分)、ラム・ウェイ(プロジェクトA2の悪徳署長)、ビリー・チョウ(キックボクシングの元チャンピオン)、ラウ・カーウィン(武術指導家・俳優)、御馴染みジャッキースタントチームのタイ・ポー(ひょうきん)など脇役陣も豪華。ラスボスのファーを演じたユン・ワーは、燃えよドラゴンでブルースリーの吹き替えを担当した事もあるジャッキーやサモ・ハン、ユン・ピョウと同じ七小福のひとり。
またまた、講談社のジャッキーチェン最強伝説。
やはり3大スター最後の競演作ということと、ベニーユキーデ戦を取り上げている。
一般的には、知名度はそれほどでもない作品ですが、ジャッキーファンには評価が高い。
しょっちゅう共演しているようにも感じますが、3人揃っての主演は3回しかない。五福星 大福星 七福星などでも、一緒に出ていますが、こちらはゲスト扱い。
個人的な思い出としては、この頃まで来るとジャッキー熱やカンフー映画熱もそろそろ冷めてきた頃。それでも、スパルタンX以来の顔ぶれということで劇場に見に行きました。残念ながらベニーユキーデとの再戦も、スパルタンXの頃のようには乗れませんでしたが、細い鉄骨の上でアクロバットをこなすユン・ピョウが印象に残りました。90年代に入るとジャッキー人気にも陰りが見え初めてきて、一時期不振の時期を迎えます。その後、95年のレッド・ブロンクスで見事ハリウッドブレイクを果たしました。
ということで、豪華なんだけど地味、通好みなサイクロンZ Dragons Forever 飛龍猛将でした。
参考:Wiki サイクロンZ、ジャッキーチェン、サモハンキンポー、ベニーユキーデの項、ジャッキーチェン最強伝説/講談社