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幸せの教室 LARRYY CROWNE・ウォルトディズニージャパン

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 幸せの教室 Larry Crowneは、2011年に公開されたトム・ハンクスとジュリア・ロバーツ主演のコメディ映画。

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 主演だけではなく、共同製作、共同脚本、監督までもトム・ハンクスが務めたという、トム・ハンクスが長年企画を温めていて撮りたかった作品ということになる。彼が監督を務めた作品としては、1996年のすべてをあなたにに続いて15年ぶり2作目にあたる。物語は、善良で常に前向きな中年男ラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、長年務めてきて優良社員として何度も表彰されていたショッピングモールを、学歴が足りないからという理由でリストラされてしまう。妻との離婚、家のローンなど色々な問題を抱える彼は、再就職のための学歴を得るためにコミュニティーカレッジに通うことにする。そこには、教えることに意欲をなくしたやる気のない教師メルセデス(ジュリア・ロバーツ)がいた・・・。

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 幸せの教室という邦題からも分かる通り、中年からのやり直し、学び直し、中年からの青春映画という趣の作品。背景としては、金融バブルの崩壊により、リストラや失業、自宅を手放すといった現象が起きた、2007年頃からのアメリカのサブプライムローンがある。そのため、物語冒頭のスーパーをリストラさせられるくだりは、妙なリアリティがあり、住宅ローンを払えなくなった彼は、何件もの求人の電話をしては断られ、銀行からは冷たくあしらわれてしまう。ただし、深刻なのは冒頭の10分程度で、学歴を得るためにコミュニティカレッジに入学すると決めてからは、どんどんと物語が展開していくようになる。コミュニティカレッジでは、就職に有利だからと経済学とスピーチの授業を進められ受講することにする。ガソリンが無駄だからと車を手放した彼は、ヤマハ製の中古のスクーターで通学をし、若い同級生の女の子に誘われて、若者のスクーターギャングの仲間らと一緒に走り回ったりするようになる。

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 メルセデス(ジュリア・ロバーツ)が担当しているのは、このスピーチの授業。小説を書くと言って働かないひものような旦那を抱え、教えることへの意欲も失っている。ラリー・クラウンと関わっていくなかで、次第に彼女の方にも変化が訪れて・・・という展開。ちなみに経済学のエド・マツタニ教授は、スタートレックの機関士ジョージ・タケイが演じており、スタートレックネタも散りばめられている。

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 物語冒頭は、アメリカの深刻な社会問題を背景として始まっているのだが、物語の舞台の設定であるロサンゼルス近郊の街中をスクーターで走り回るシーンは、ほとんどローマの休日のノリ。妻との離婚により家族を手放し、ガソリンを大量に喰う大型のSUV車を手放し、中古のスクーターに乗り換え、ローンの抵当のために家を手放すことで、ラリーはどんどん身軽になっていく。同時に表情もどんどんと明るくなり、幸せ、幸福というのは、どんな状況にあっても見つかるということが、トム・ハンクスが描きたかったことのように思える。2度のオスカーを受賞し、全米でも最も成功したハリウッドスターの一人であるトム・ハンクスが、自ら撮りたかったのが、このような小さな幸せについての映画だったというのは、ちょっと面白い。

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 ジュリア・ロバーツは、物語の冒頭ではギスギスした感じで登場して、老けたなと感じさせるのだが、物語が進むにつれて生き生きとしてゆき、物語後半では全盛期を思わせる表情を見せるようになる。メイクで変化していく様子を見せているんですね。

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 冒頭でラリー・クラウンがスーパーをリストラされるのは、学歴が足りないから。大卒でないという理由で解雇できてしまうのは、解雇の規制が緩やかな欧米ならでは。ただし、ラリーが通うことになるコミュニティカレッジは、入学試験もほとんどなく、誰でも、どんな年齢からも入学が出来て、短大卒の資格を取れるという2年制の公的機関。そこから大学に編入して、学士の称号も取れる。解雇もされやすいけれど、学び直しもしやすい環境がセーフティネットのひとつとしてあるわけです。映画では、経済学とスピーチという2コマしか取っていないため、2年では卒業できないだろうし、1年目で物語が終わるためラリーが再就職できたかどうかも描かれない。車も手放したままで、住処もアパートとなり、学び直しをすることですべてを取り戻したという展開になっていない。ディズニー映画なので大人のおとぎ話とでもいうべき話なのだけど、アメリカ映画的なハッピーエンドとはしないことで、リアリティを保っている。

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 日本には、コミュニティカレッジに該当する機関はない。けれど少子化の影響で、難関大学以外であれば社会人入試などで、誰にでも再度学び直しをする門戸は開かれている。試験のない専門学校ならなおさら。そこまで本格的ではなくとも、夜間の学校、通信過程という手段もあるし、生涯教育ということで公開講座なんかも多くの学校で開かれている。さらには職業訓練校や各種のカルチャー教室もある。大作映画ではないし、制作費のほとんどトム・ハンクスとジュリア・ロバーツの出演料なんじゃないかと思える小さな作品ですが、こういう方向性もあるのだと気付かせてくれる意味で、良い映画だとお思います。個人的な評価は、星★★★+☆(70点)。

参考:Wiki 幸せの教室、トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、コミュニティカレッジの項

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