ゲーム音楽大全 ナムコ名作CD付きは、宝島社より2016年6月に発売された一冊。発売時にはレトロサイト界隈でちょっとした話題となりました。最近では、ファミコンなどのレトロゲーム回顧本がちょっとした流行で次々と出版されていますが、これはちょっと珍しいゲーム音楽に焦点を当てています。
ゲーム音楽というとCDがプレミア付きの価格で売られていたりと、マニアックすぎてなかなか付いていけないディープな世界。ゲームミュージックを扱った書籍というと、先駆者として電波新聞のゲーム・ミュージック・プログラム大全集なんかが浮かびますが、あれは打ち込みをする人向けに楽譜が収録されているというマニアックさぶりでした。この本では、そのような知識や音楽的な素養がなくとも楽しめるように一般的な作りになっています。
ディグダグやゼビウス、ドラゴンバスターのBGMを作曲したサウンドクリエイターの慶野由利子氏、チャレンジャーや迷宮組曲を作曲したハドソンの国本剛章氏、ゲームデザイナーの遠藤雅伸氏、高橋名人など、ゲーム音楽やゲーム業界の著名人のインタビューが収められている。
この本の一番の売りでもあるナムコ名作CD付。ファミコンの音源が収められています。未開封だったため、ほとんど新古本といっても良い感じ。この書籍が出たとき約1,700円という価格に躊躇しましたが、この音源がアーケード版かFM音源であれば迷わなかったのに。ここが一番惜しい点。
内容のほうは、冒頭の10ページほどを駆け足でゲーム音楽の歴史を解説してある。しかし、日本初のゲーム音楽のアルバムである細野晴臣氏のビデオ・ゲーム・ミュージックにはちょこっとしか触れていないし、タイトーのZUNTATA、コナミ矩形波倶楽部、PCでは日本ファルコムの古代祐三氏とかにも触れていない。ナムコのゲーム音楽には欠かせない大野木宣幸氏や、ゲーム音楽で遠藤氏を引っ張り出したからには小沢純子氏も欠かせないと思うが、こちらもあまり詳しく取り上げられていません。スーパーマリオやゼルダを作曲した近藤浩治氏、GoGoマリオ!!を歌った谷山浩子氏とか、ネタは幾らでもあると思われるのですが。
この本の売りのひとつがファミコンコレクターKUBOKEN氏による、全ファミコンミュージックレビュー。音楽の専門でないコレクター氏によるレビューとは?とも思ったが、全ファミコンソフトのレビューともなれば、確かにコレクター氏にしかできないという気もする。大変な手間がかかったと思われます。
ということで、特にゲームミュージックに詳しい人だと色々と物足りない出来だと思いますが、第2弾も予定されているそうなので、そちらに期待しましょう。一般のライトな層がああ懐かしいと懐かしむ分には、ゲームミュージックのCDも付いてくるしなかなか楽しめる企画だと思います。
「ゲーセン」最強読本 ―永久保存版名作ゲームBEST100は、2003年に宝島社より別冊宝島の一冊として発売されたムック本。ゲーム音楽大全 ナムコ名作CD付きに対して、こちらは10年以上前の別冊宝島ものになります。内容は、70年代~90年代のゲーセンの歴史を振り返ったもの。2000年代の初期頃にも、ファミコンソフトの相場が高騰したり、様々なジャンルで復刻版が流行るなどレトロブームが起こっていました。その頃によくあったレトロゲーム本ですね。
巻頭ではインベーダーの生みの親西角友宏氏のインタビュー記事、ゲームセンターあらしの新作、すがやみつる氏へのインタビューの後、主に80年代を代表するアーケードゲームが掲載されていますが、100と銘打ってあることからもわかるように、すべてが収録されているわけでもありません。
巻頭のあらしの新作漫画。あらしは、この頃のレトロゲームブームの中で引っ張りだこでした。記事のほうでは、ひとつのゲームに1ページを使っての解説。惜しむらくことにモノクロ。この本に限らず、このような解説記事はライターさんとの相性もありますから、なかなか満足できるようなものって少ないですね。
まあ、それでも主要な有名どころは押さえてあるので、この手のライトなレトロゲーム本としては満足。アーケード限定ですがゲーム音楽大全の副読本としても機能するでしょうか。
それよりも、この本で特記したいことは「ゲーセン」最強読本と名乗っている通り、ビデオゲームだけにとどまらず70年代のエレメカや90年代のプリクラなどゲームセンター全般を扱っている点。エレメカの記事は、なかなかありませんので、そういった意味では貴重なのかなという気がします。
参考:ゲーム音楽大全 ナムコ名作CD付き (TJMOOK)&「ゲーセン」最強読本 ―永久保存版名作ゲームBEST100・宝島社