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おもちゃのすぎやま―小さな町の昭和のおもちゃ屋/斎藤 巧一郎・有峰書店新社

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 おもちゃのすぎやま―小さな町の昭和のおもちゃ屋は、有峰書店新社より2013年に発売された写真集。カメラマン斎藤 巧一郎氏の作品で、東京都練馬区桜台で2012年まで57年間営業していたおもちゃのすぎやまという小さな玩具店の日常から閉店までの一年間を追ったもの。


 個人の玩具店は、すでに80年代頃から姿を消し始めていたように思います。電子ゲームやファミコンのブームでそれまでプラモデル、人形などの素朴なおもちゃを扱ってきたお店が対応できなくなり、90年代に入るとアメリカからの外圧で大店法が改正されて、米資本の大型店トイザらスが日本各地に進出して行った。その後、2000年代には少子化の影響もあってか、おもちゃのバンバンやハローマックなどの大手資本によるチェーン店が姿を消し、個人の玩具屋さんというのは大変難しい時代になっている。専門の工具や細かな品揃えで固定客を掴んでいる模型店などは、まだちらほら残っていますが、店主の高齢化など跡継ぎがいないことから、そちらも少しずつ減ってきています。


 そんな中、2012年まで個人の玩具屋さんを守り抜いた店主の記録と、そこに通った(かっての)子供たちの記憶が写真集の中に封じ込められている。昔は、学校の近くに駄菓子屋や文房具店と兼務している店があったり、ビデオゲーム全盛の頃には駄菓子屋兼玩具店にゲームが入って駄菓子屋ゲームセンターになったり、ファミコン全盛期になると中古ファミコンソフトを扱いだしてファミコンショップへと鞍替えしたりと、そんな多くの人の記憶に残っているだろう、それぞれの思い出の中の玩具店の残像を見ることが出来ます。


 人が年をとるように、時代の流れとともに街の風景が移り変わっていくというのは避けられない。町の電気屋さんも個人経営の古本屋なども、大手資本のショップの隆盛により姿を消していった。その大手ショップですら、ネット通販に押されて赤字だというニュースが流れています。デパートの屋上やゲームセンターなども様変わりしてしまった。自分の記憶の中の個人の玩具店などは、90年代を待たずかなり早い時期に姿を消しています。そんな中、2012年まで店を守り通せたということは、ある意味幸福なことだったのかも。ただ、玩具店が店を閉めるという話題は意外とニュースにも取り上げられていて、多くの人にとって玩具店の記憶とは特別なものなのかもしれません。


 店が閉店するということで、商店街の有志が集まり、この写真集が作られたみたいです。東京のど真ん中で、57年間個人のお店を守り抜いた店主(おばあちゃん)の姿に、なにかすごく人生を感じてしまう一冊。

参考:おもちゃのすぎやま―小さな町の昭和のおもちゃ屋/斎藤 巧一郎・有峰書店新社、有峰書店新社HP、練馬桜台情報局、マックライオンへ捧げる「ハローマック跡地は今?」北海道編まとめ、ロケットニュース24、日本懐かし10円ゲーム大全/岸昭仁・辰巳出版

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